2012年度

◎こども創作教室「ぐるぐるミックス」

◎谷中妄想カフェ〜ちょうちんもってちょっとそこまで〜
カヤバ珈琲からちょうちんを片手に夜の谷中のまちを巡る散歩ツアー。
参加者は数名のグループになり、 ナビゲーターとともに下町情緒の漂う夜のまちを、ちょうちんの灯火と共に味わいます。古い住居やお寺の間を通る谷中独特の路地を歩く道中で出会うのは、ちょうちんを両手に踊る人影や見上げるような大木など。谷中の日常風景に幻想的なひとときをもたらし、夢かうつつかと参加者の “ 妄想 ” をかき立てるような不思議なできごととの出会いが用意されています。
最後はお寺で記念写真を撮り、お茶で一服しながら散歩の道中でのできごとをそれぞれ思い起します。お土産のちょうちん型クッキーを手渡された後、ろうそくの火を消して終了となります。
その後カヤバ珈琲に戻り、食事などを楽しむこともできます。

前年に引き続き2度目の開催である今回は、地域の方々にも谷中や散歩、アートに関心のある人々にも“ 夏の風物詩 ”、また地域の季節の行事として関心を持ってもらえる企画となることを目指しました。

◇実施概要
実施日:平成24年7月20日(金)~9月8日(土)毎週金曜・土曜日開催(全16回)
時間:19時 ~21時半まで 30分おきに出発(所要時間:約1時間)
妄想カフェ会場:カヤバ珈琲(台東区谷中)
受付:カヤバ珈琲 ANNEX
散歩エリア:カヤバ珈琲周辺
参加者数:329名 (内訳:一般291名、招待38名) (定員:各日24名)
参加費:1,200円 ※21時半の回のみ 1,000円
運営体制:【ナビゲーター】各日3名程度
【スタッフ】各日5~10名程度
【監修】富塚絵美
協力:カヤバ珈琲、SCAI THE BATHHOUSE、感應寺、クマイ商店、山崎屋源七提燈店、MALUIKE HOUSE、 谷中・上野桜木界隈にお住まいのみなさま、東京藝術大学熊倉純子研究室

◎谷中妄想ツァー!?告白
「谷中妄想ツァー!!」(※1・2)とは、アートを媒介としてさまざまな立場から誰もが参加できる、参加型パフォーマンスツアーです。
拠点形成を通じて若手表現者とのネットワークを醸成し、同時に地域の協力者を得ながら表現の場をコーディネートすることにより、若手表現者の飛躍の瞬間を谷中のまちを舞台につくりあげる試みです。
※1 妄想…根拠なくあれこれ想像すること
※2 ツァー!!…ツアーがよりアーティスティックに進化したもの。

◇実施概要
実施日:2 月 17 日(日)、24 日(日)
時間:13時 ~ 15時ごろまで(所要時間:約2時間)
会場:谷中・上野桜木界隈
スタート地点/集合場所:旧平櫛田中邸アトリエ
ポイント地点:木はっち、大雄寺、三原屋、民家(遠津邸、相澤邸、堀内邸)、 アートスペース(櫻木画廊、寺町美術館)、商店(アンティーク初音、筆や、ルッチュ)
参加者数:17日:47名、24日:46名、 計93名 (定員:各日 50 名、計 100 名)
参加費:大人 1,000 円、小学生 500 円、未就学児無料
運営体制:【企画構成】富塚絵美、小林あずさ
【脚本・演出】三浦直之
【制作協力】東京藝術大学熊倉純子研究室、南雲由子
協力:NPO 法人たいとう歴史都市研究会、井原市、ロロ、坂本もも、谷中・上野桜木地域のみなさま

◇内容
谷中のまちを舞台に展開する参加型パフォーマンスツアー。三浦直之(劇団ロロ主宰)の脚本・演出によって語られる<告白>と、谷中のまちに散りばめられた<演劇の断片>と、まちの日常にまぎれた<神出鬼没のパフォーマー>が織りなすパフォーマンスを4人一組のグループで巡る。

◇開催状況
2012年度は、谷中のおかっての外部から演出家を招聘したのがこれまでの妄想ツァーとは大きく異なる点です。招聘した演出家は、東京の小劇場を中心に活動する若手の劇団であるロロの主宰で演出家・劇作家の三浦直之さんです。三浦さんが創作する演劇は、いくつかのエピソードが連関しつつ、ポイント地点でのパフォーマンスがそれぞれ連関しながら進んでいきます。
また、大きな変化として挙げられるのは、ポイント地点のパフォーマンスを公募で集まった人とともに、三浦さんによるワークショップで創作したという点です。12人の参加者は演劇を専攻している学生から、興味はないが企画のタイトルに魅かれて応募したという人までさまざまでしした。演劇ワークショップでは、初対面の人にはとても話すことができないようなトラウマや個人的な思い出について話し、それが作品に反映された様子は鮮やかでした。
演劇ワークショップで創られたポイント地点はポイント地点12箇所のうち、6箇所でした。その他の6箇所は、妄想パフォーマーと呼ばれるパフォーマーたちによる表現がおこなわれました。彼らは〈告白〉というテーマで、自らの表現を通じて告白をおこなった。表現形態は、音楽から映像、ダンスなど多岐にわたりました。

◎ホームパーティ形式パフォーマンス公演「どーぞじんのいえ」

田中邸での一年間の活動を通じて、建物とそこに集う人々の特性を活かしたプログラムの形態を検討し、そのお披露目の場として平成25年3月にホームパーティ形式パフォーマンス公演「どーぞじんのいえ」を開催しました。

◇実施概要
プログラム開発期間:平成24年9月~平成25年3月
プログラム実施日時:平成25年3月3日(日)、9日(土)13時~16時
会場:旧平櫛田中邸(東京都台東区上野桜木2—20—3)
参加者数:3月3日(日):28名(内訳:一般16名、招待12名)、3月9日(土):44名(内訳:一般22名、招待22名)、 計72名 (定員各日50名)
参加費:1,000円
企画・演出:富塚絵美
出演者一覧: 田中文久、小暮史人、村山良、島田幸輝、松岡美弥子、中畑太吾、大西功起 西原尚、加藤未礼、岸川典義、ヨウメイ、矢部真澄、豊永恭子、夫学柱 早水博之、東出亜里紗、市川峻平、青島啓太、きむらとしろうじんじん BARBARA DARLINg、宮澤ほのか、山岡亜紀、浅野葉子、大久保由美 野中浩一、波野平遼、小竹さん、柳沢功
チラシ・パンフレットデザイン:大原慎也(MUPLUS)
広報協力:及位友美(voids)
特設ウェブサイト:吉岡理恵(ディレクション)、ドリル LLC 合同会社(制作)
特設サイトレビュー執筆者:
鈴木理映子(演劇ライター)、椎原晶子(NPO 法人たいとう歴史都市研究会 副理事長) 寺田和代(フリーライター)※サイト掲載名「さんおば」、長島確(ドラマトゥルク) 中島裕美(本企画観察者)
制作:一般社団法人谷中のおかって
主催:東京都、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)、一般社団法人谷中のおかって
協力:NPO 法人たいとう歴史都市研究会、井原市、谷中・上野桜木地域のみなさま、東京藝術大学熊倉純子研究室

◇公演内容
架空のコミュニティーをつくりだしている「どーぞじん」たちが、独自の文化でおもてなしをするホームパーティを開き、そこに来場者が参加する形式のパフォーマンス。「どーぞじん」たちはお菓子やお茶を用意していたり、ミシンでプレゼントをつくっていたり、楽器を演奏していたりします。アトリエ・居間・ 座敷・書斎など多様な特徴をもつ田中邸の空間を活かし、家のあちらこちらでさまざまな「表現」が繰り広げられました。入口でプレゼントされるクッションを片手に、参加者たちは田中邸内を回遊しながら「どーぞじんのいえ」を味わいました。また、ティーセレモニーや記念撮影などをきっかけに一同が集まり、コンサートや盆踊りに似た独特の世界観を体験しました。

◎アートよろず相談
「アートよろず相談」では、必ずしも「相談」に対する具体的な提案や対処がなされるわけではなく、話を聞く対象、表現を期待する対象としての管理人が存在することにより、訪れた本人が個人的な表現意欲と社会との接点を見つけたり、折り合いをつけたりする場となっています。
その内容はアートにまつわる企画の相談をはじめ、それ以外にも、進路や対人関係に関わることなど身近な表現にまつわる相談も少なくありません。

■相談内容の事例
◯自己の表現欲求と社会との接点に関する相談
美術系大学を卒業後、生活雑貨をデザインする企業に就職した女性からの相談。

◯デザイナーとしての独立に関する相談
デザイン会社勤務の経験を活かし、デザイナーとして独立を考えている女性からの相談。

◯企画者からの相談
アートとまちあるきを題材に、学生や社会人を対象とした田中邸での自主企画に関する相談。
後に企画が実現し、谷中のおかってとしても当日協力として関わりました。

◯まちのお祭りに関する相談
平成23年度のきむらとしろうじんじんによる「野点」のまちの協力者であり、「野点」以降も「ぐるぐるミックス」のゲストやスタッフとし ても関係が続いている人物からの相談。
相談内容はこども向けの商店街の夏祭りにおけるオープニングパフォーマンスに関するものでした。谷中のおかってメンバーや芸術っ子がパフォーマーとして参加協力することとなり盛り上がりをみせました。

◯作品展示に関する相談
若手女性彫刻家2人からの展示に関する相談。平成25年度に展覧会を実施することとなりました。

◎月曜私塾
「アートとは何か、何のためにあるのか」を基本的なテーマに据え、毎回参加するメンバーの関心や、派生するテーマに絡めながら研究/ディスカッションする勉強会です。

■主な取り組みとテーマとなった議題
◯ダムタイプの活動と「アート」の力について
アーティストのアキラ・ザ・ハスラー氏を招きいれ、90年代はじめより京都を拠点に展開された、アーティストグループ「ダムタイプ」。エイズ啓蒙活動、ゲイコミュニティーなどを起点とし、ジェンダーやセクシュアリティー、またエイズを取り巻くさまざまな問題の話から、「差別」や 「ボーダー(境)」、あるいはそれらをつくり出している社会的、文化的背景を見つめました。社会の 習慣を越境、また変えてい こうとするとき「アート」はどんな力になり得るかを検証しました。

◯「アート」がないと生きていけない
近年、「参加型アートプロジェクト」や「ワークショップ」と呼ばれる活動が普及しています。一つの作品に対して鑑賞者がいる近代的な関係とは別に「アート」の味わい方、あるいは需要が芽生えているのではないかという仮説のもと、今日展開されるさまざまな活動を参加者の経験談から検証しました。

◯「アートプロジェクト」の今日とこれから
「アートプロジェクト」と呼ばれる活動の発生を歴史的に遡り、近・現代のアートを取り巻く環境、社会、文化背景を解析しながら、「アート」が今日的意義をもつとしたら何かを検証しました。

◯話しがつづかない若者~共通の経験、美的経験~
はじめは参加者がお互いの経験から「話がつづかない体験」また「どうして、そうなのか」についてディスカッションをし、そこであがって きたエピソードを「余裕のなさ」、「便利」、「欲望の減少」など身近なキーワードに起こし、「若者」に限らない今の社会が抱えるさまざ まな問題とのつながりから考えました。

◯住み方・シェアハウス・家
谷中地域のシェアハウスに住む社会人で他企画に参加したことによりつながりができた方を招きました。「家族」という制度の外に暮らしのあり方を求め、個人のつながりを大切にし、新しい生活環境を創造する活動の動向を見つめ、「なぜ・どんなふうにして」それらの活動やニ ーズが生まれてきたのかについて、歴史、文化、社会の背景と参加者の率直な実感を交えて検証しました。